新海誠作「君の名は。」は千と千尋の神隠し(興行収入1位)を超えることができるのか?

新海誠作「君の名は。」が大旋風を巻き起こしている。この大ヒットの理由はどこにあるのだろうか。今回は主に深海誠がこれまで積み重ねてきた新海誠という映画はどういったものなのかと、最後に最終的な興行収入を予測してみたいと思う。

※具体的な話は一切触れていませんが、「結末」の部分で、一部ネタバレが含まれます。

具体的な内容まで踏み込んだ考察はこちらをご覧ください。

圧倒的な映像美と現実感

深海誠といえば、まずは、この点を上げる人が多いだろう。何度でも見返したくなる美しい背景画。上空や足元からのカットや、普段見ることのない、電車の下の映像など圧倒的な映像美で描かれている。私たちは、どこか現実よりも魅力的で美しい「リアル」を深海誠作の中で見ているのである。また、その圧倒的映像美が、そこへ行ってみたい、もう一度見てみたいにつながるのであろう。

細かな描写と、現実よりも、どこか神秘的に描かれる映像

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上空からの神秘的な町の映像

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雨までもそのシーンの主役にしてしまう映像美

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また、「秒速5センチメートル」の本当にすべてにい疲れ切っているシーンでの主人公タカキがエレベーターの中でカギを落とすが、3、4秒ただ、落ちたカギを眺めることを表現することで、タカキの現状を短い作中の中で見事に描き切っている。そういったシーンにあるある、と思わされる視聴者はおおいのではないだろうか。

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映像を引き立たせる美しい音楽

最高の映像を引き立たせる、最高の音楽。特に映像と音楽のマッチングが評価されたのは第三作の「雲のむこう、約束の場所」からであるが、第四作の「秒速5センチメートル」では、音楽とともに一気に描写を進めたり、それぞれの出演者たちの、その時々の気持ちを絶妙に表した、もう一度、何度でも映像とともに聴きたい音楽が選曲されている。これらはぜひyoutubeで検索をかけてみてほしい。

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心と心の距離をテーマにしているということ

深海誠は基本的に「心と心の距離」という同じテーマを採用しつづけている。物理的距離や、そこに流れる時間、それらをつなぐ速さをもとに主人公の心の距離を描いているのである。第二作目である、「ほしのこえ」では物理的距離が、第三作の「雲のむこう、約束の場所」では、過ぎてしまった時間と、夢と現実という距離が、第五作の「言の葉の庭」では先生と生徒という社会的距離と、年齢的距離が、第四作の「秒速5センチメートル」では、地理的距離、二人のそれぞれに流れていった時間、そして、彼らをつなぐ、電車・手紙・メールなどの速さを表現に取り入れながら、二人の心の距離を描いているのである。「君の名は」では、体が夢の中で入れ替わる中で、直接会うことはないけれども、少しずつ惹かれていく二人の心の姿が、ストーリーに交え見事に描かれているといえるだろう。

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心を引き付ける美しい表現

日本人は直接言わないことに美しさを感じる。行間を読むなどはその最たる例だ。下記は「言の葉の庭」で雪野先生が、主人公タカオに対して、去り際に言った言葉であるが、文学的表現を比喩的に用いるなどし、個人の感情や今後起こる展開を暗示させている。そしてあれって、どいうことなのだろうと映画について、再度調べたり、することで、深海誠作に人はのめりこんでいってしまうのである。

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鳴る神の 少し響みて(とよみて) さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
雷神(なるかみ)の 少し響みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば

(訳)

雷が少し轟き、曇ってきて、雨でも降らないかしら。あなたを引きとめられるのに。
雷が少し轟き、雨が降らなくても、私は留まりますよ。あなたが引きとめて下されば。

秒速5センチメートルよりの第二話「コスモナウト」より、夏がだんだんと秋に近づいていく表現を、少し非日常的な表現で種子島の情景と繊細な登場人物の心を伝えるのをサポートしてくれるのである。

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あの日から、いくつかの台風が通り過ぎ、そのたびに島は少しづつ涼しくなっていった。サトウキビを揺らす風がかすかに英気をはらみ、雲がほんの少し高くなり、雲の輪郭が少し優しくなって、カブにのる、同級生たちが薄いジャンパーを羽織るようになった。

同じく、秒速5センチメートルより、「まるで雪みたいだね」と桜が舞い落ちる中、冒頭で、アカリがタカキに話しかけるシーンがあるが、再度二人が再開した、雪の降る、冬の日に桜の木の前で、雪に手をかざしながら、「まるで雪みたいだね」というシーン・表現など、心に残るシーンが必ず準備されている。

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過去の作品と比べて何が違うのか。

キャラクターの美しさ

前作の「言の葉の庭」より、キャラクターデザイン担当が、西村貴世(原画のみ担当)から、土屋堅一に変更になっていることで、深海誠の真骨頂である、背景画の美しさと、人のレベルが一気にマッチした。

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結末

これまで、決して、ハッピーエンドとは言いずらい終わり方だったものから、ハッピーエンドとなったことによって、終わった後の満足度が大きく向上したのはこの映画が成功した最も大きな要因だと思う。

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ストーリー

これまでの深海誠作とは異なり、一般に共感できる、目的・ゴールを設定したことで、選り好みされない、テーマとなった。また、前前作の「星を追う子供」では、ジブリを意識しファンタジー性が強かったことから、深海誠の真骨頂である、現実感が薄れてしまったが、今回は、現実の高校生をテーマに添え、夢で入れ替わるという「もしかしたら」というちょうどいいファンタジー感を盛り込んだことによって、現実すぎた、「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」にうまくファンタジー要素が加わった形になり、深海真の真骨頂である、現実感を生かしつつも、ワクワク、ドキドキ、シンプルながらも先が読めないストーリーに仕上がっている。

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「千と千尋の神隠し」をこえるのか

現在「君の名は」「風立ちぬ」を抜き去り、興行収入6位までつけてきている。(2016年10月4日現在)実際グラフで見ていただくとわかるのだが、「崖の上のポニョ」を越えるのは確実であり、次に見えるのは、「ハウルの動く城」、そして、「アナと雪の女王」、「千と千尋の神隠し」となる。伸びをみると、「千と千尋の神隠し」には及ばないもののアナと雪の女王よりも高い水準で水位しており、東宝が上映を当初の計画よりも伸ばせば、おそらく230億から250億円前後まで伸びていくのは確実だろう。

日本の歴代アニメーション興行収入ランキング    

1 千と千尋の神隠し 304.0億円   

2 アナと雪の女王 254.8億円      

3 ハウルの動く城 196.0億円    

4 もののけ姫 193.0億円      

5 崖の上のポニョ 155.0億円      

6 君の名は   130.0億円 

公開日数と興行収入の推移(筆者作成 ※2016年10月4日現在のデータ)

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